東日本大震災について「東北で良かった」と…


 東日本大震災について「東北で良かった」と発言した今村雅弘前復興相。被災者の神経を逆なでする言葉であり、野党はもちろん、政府・与党からも非難の声が上がった。復興相を辞任したのは当然だ。

 今村氏は、福島第1原発事故で故郷に戻れない自主避難者に関し、「自己責任」としたことでも批判を浴びた。ただ、この時は「自己責任」という言葉が今村氏の口から出たわけではない。記者会見でのフリージャーナリストの挑発とも取れる質問に、不用意な対応をしてしまった。

 政治家の場合、5分間のあいさつだとしても、その中で一つでも不適切と取れる表現があれば、発言全体の趣旨は葬り去られ、その表現だけが非難の対象となるケースが少なくない。

 こうした報道の仕方をするメディアの側にも問題はあろう。発言者が弁明しても、真意を伝えようとしない。これでは、当たり障りのないことさえ言っていればいいということになりかねない。揚げ足を取るような批判は控えるべきだ。

 今村氏は、東日本大震災のような大災害が首都圏で発生すれば大変だということを話したかったのだろう。それは分かるが、さすがに「東北で良かった」という表現は許されるものではない。

 東日本大震災による死者・行方不明者は今年3月時点で1万8000人以上に上る。いまだに仮設住宅で生活せざるを得ない人も多い。「東北で良かった」わけがない。今村氏は軽率のそしりを免れない。