国の「働き方改革」で、政府、労使が議論を…


 国の「働き方改革」で、政府、労使が議論を続けてきた残業時間の上限規制をめぐっては「月100時間未満」で決着する見通しとなった。もちろん規制を設けることは重要で、働き過ぎの過労死などは言語道断。その上で、働きやすい環境づくりについての検討も必要だ。

 例えば、「働き方を変えなければ人材流出」と述べるのは、世界の食品メーカートップ10入りを目指す味の素の西井孝明社長。「日本人だけでなく、多様な人材がここに居たいと思うような(社内)環境にしなければ競合社に負ける」と話す。

 所定労働時間の短縮だけでなく、テレワーク拡大、女性登用にも力を入れる方針だ。「女性が辞めるのは味の素に魅力がないと言われているようなもの」とも。

 日本で以前、国民の働き方が問われたのは1980年代中盤。週休2日制の導入で労働時間が短縮された上、平均寿命が延び、定年後の余暇の過ごし方が社会的な課題として浮上した。

 これは構造的に見ると、工業化と都市化の過程で「労働の時間と生活の時間の分解(分離)」(川北稔編「『非労働時間』の生活史」)が進む中で提起された問題だった。

 一方、今回の働き方改革は「工業化以後」(同)の社会変化に対応し、国民が生活と労働の融和を目指していることと無関係ではない。こうした融和に生きがいを見いだそうとする現象は欧米にはあまりないものであり、日本が率先して解決すべき課題であると言えよう。