日本と韓国の間は今年のわずか1カ月の間に…


 日本と韓国の間は今年のわずか1カ月の間に、平成27(2015)年末のいわゆる慰安婦問題をめぐる日韓合意以前に戻ったような憂慮される事態となっている。韓国側の釜山の日本総領事館前の「慰安婦像」、竹島への設置の動きなどは合意の精神とは懸け離れたものである。

 それに日本側が返還を求めている、盗んでいった対馬・観音寺の仏像の所有権を韓国の寺に認めた韓国・大田地裁の奇妙な判決。仏像引き渡しを命じられた韓国政府は控訴したが、両国の距離は遠のくばかりだ。

 9日から一時帰国中の駐韓大使と釜山総領事の復帰も見通せないまま月を越す。そんな両国に吹き荒れる寒風の中で、ソウル東部地裁がこの25日に、「慰安婦問題」を扱った著書『帝国の慰安婦』で名誉毀損(きそん)罪に問われた朴裕河・世宗大学教授に無罪を言い渡したことに安堵(ど)した。

 「検察が起訴したこと自体に無理があった」(読売26日社説)のはその通りだ。とはいえ、司法が世論に迎合しないで、厳正に法と証拠による合理的かつ冷静な判断を下せるだろうかと、危ぶむ見方もあったのだ。

 朴槿恵大統領についてのコラムで産経新聞の元ソウル支局長が名誉毀損で在宅起訴された際も、起訴自体が無理筋であったが、当の支局長も世論と政情から無罪は難しいとみていた。

 それでもソウル中央地裁は無罪判決を下した。韓国の司法は法にのっとり「学問の自由」「言論の自由」の盾となったのである。