「子や孫、未来を生きる世代のための国創り」に…


 「子や孫、未来を生きる世代のための国創り」に尽くすと、施政方針演説で安倍晋三首相。時宜を得た決意表明だ。

 さらに、それには教育が重要で、「誰もが希望すれば、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければならない」と。高校生への奨学給付金の拡充や幼児教育の無償化などに言及した。

 これらは福祉政策の一環でもある。従来、日本の社会保障は、高齢者に比べ子供や若者に対する支援が薄いのが特徴的だが、これからは将来を背負う世代を重視した教育、福祉政策が必要である。

 ところで、その教育、特に大学教育をめぐっては今日、改善点がいろいろ指摘され、混迷の度を深めている。例えば、人文系学部の不人気、定員割れという問題が提起されてから随分たつが、その改善、教育の在り方について確たる解決案は出されていない。

 この定員割れの事実は、大学経営の問題と連動しており、結果的に今日の大学教育の意義を厳しく問うている。こうした中、政府の再就職等監視委員会は、文部科学省が組織的に幹部の天下りをあっせんしていたと認定する調査報告を公表した。

 人事課経由で求職活動をした元高等教育局長の吉田大輔早稲田大学教授(61)は辞職。大学側にはおとがめはなかったが、本人の研究業績よりも、世俗の肩書を重んじた安直な採用だと言われても弁解できないだろう。学の独立、久遠の理想を掲げた私学の雄の痛い黒星だ。