東京地方は、朝の散歩それも多少速く歩くのが…


 東京地方は、朝の散歩それも多少速く歩くのが気持ちのいい候となった。私事で恐縮だが、四国から上京していた知り合いは、新宿区の神田川沿いの散歩を楽しんで以下の気付きがあったという。

 田舎と変わらず犬を連れている人がたくさんいたが、おおかたビニール袋と移植ゴテの類を手にしていたこと。また「都会人は見知らぬ者に、あいさつなどしないだろう」と思っていたのは大間違いだったこと。

 たいてい先方から彼に「おはようございます」と声を掛け、会釈をして通り過ぎ恐縮したという。また道端の公園の一角に高齢者向けの体力測定器具などが設置され、せっせと利用されていたのが目に付いたこと。

 ところが、である。日中は、その元気なお年寄りたちは家の中にいるのだろうか、姿をほとんど見なかった。彼が4~5日居た住宅街の近くも昼間は学生や勤め人の街に変わってしまうのに驚いたという。

 評論家、塩田丸男氏のエッセー『口下手は損ですか』には、氏が都下で団地住まいした時分の我が身を「同じ団地の同じ棟に住んでいる人と、女房の紹介がなければ口がきけないというのは、やはり人見知りのし過ぎであろう」と振り返っている。

 都会の高齢者たちのこうした性向は今もあまり変わりないと思われる。朝のウオーキングでは同志的な気分であいさつを交わしても、昼間は互いの生活に共通点をなかなか探し出せず行き来なども少ないようだ。