「おくられつおくりつ果は木曽の秋」(芭蕉)…


 「おくられつおくりつ果は木曽の秋」(芭蕉)。明日から8月。関東地方でも梅雨が明け、本格的な夏を迎えるが、歳時記では8月は「秋」になっている。正確には「立秋」(7日)以降。

 稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』によれば「三暑が過ぎると秋が来る。残暑の中にも秋風の感じられるころからやがて天高く、月よし、秋草よし、虫よし、そして晩秋の紅葉に至るまで、秋は清朗な一面ものさびしい季節である」。街に出ればセミの合唱が聞かれるのがウソのような記事だが、それも旧暦と新暦の違いがあるからだろう。

 このところの天候も曇りがちで、苛烈な暑さというまでには至っていない。クーラーの設定温度もそれほど低温にしなくても快適に過ごせる。

 最近、天候不順に追い打ちをかけるような悲惨な事件が次々に起こっている。相模原市の障害者施設襲撃やその他、常識では理解できない事件が少なくない。民俗学者の柳田国男の『山の人生』には、そんな話が多く収録されている。

 特に、冒頭の西美濃で炭を焼いて生活している50歳ばかりの男が子供2人を切り殺した話は不可解。生活が苦しいある日の夕暮れ、子供たちが仕事に使う斧を研いでいて、これで自分たちを殺してくれという話である。

 柳田は「我々が空想で描いて見る世界よりも、隠れた現実の方が遙かに物深い」と記している。明治8(1875)年のきょうは柳田が生まれた日である。