「葉の紺に染りて薄し茄子の花」(高浜虚子)…


 「葉の紺に染りて薄し茄子の花」(高浜虚子)。梅雨の時期はアジサイのほかにも花が咲く。とはいっても、食用にする野菜の花である。

 俳句の歳時記をひもとくと「人参の花」「茄子の花」「馬鈴薯(じゃがいも)の花」などの項目がある。それなりに可憐(かれん)で美しい。

 「人参のうつくしからず花ざかり」(広瀬盆城)。例えば、「人参の花」は「セリ科で、傘のようにひろがった白色の小花を群がり咲かせる」(稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』)とある。

 料理に使った残りのニンジンの根茎を薄く切り、水に漬けておくと、葉茎が伸び、そこから花が咲く。小さな花ながら懸命に生きている感じで、まさに可憐というしかない。

 「山頂に及ぶ開拓馬鈴薯の花」(太田ミノル)。「馬鈴薯の花」も「白あるいは淡紫色に畑一面に咲くと、ひなびた美しさがある。花の一つ一つは浅い五裂の可憐な花で香りもあり、梅雨のころによく似合う」(同書)。南米が原産のジャガイモは、救荒食物としても知られている。日本では、天保の大飢饉(ききん)の時にジャガイモによって多くの人が餓死を免れたため「御助芋」と呼ばれた。

 アイルランドでは19世紀半ば、主要な食料だったジャガイモの疫病の発生で大飢饉となった。そのジャガイモをアイルランドに勧めたのが、当時支配していたイングランドの貴族。今回の英国のEU離脱は、そんな歴史をほうふつとさせるが、その激震の余波はこれからである。