健康や養生に関するいわゆるハウツー本の多さ…


 健康や養生に関するいわゆるハウツー本の多さを見ても、現代人の健康願望の強さは相変わらず。国民の3人に1人が亡くなるがん対策は特に関心が高い。

 がん告知や、がん患者自ら治療を選択することは当たり前になってきた。がんのように、その克服が切に願われる分野は、治療技術・医薬品の開発競争も熾烈で、日進月歩で新しい知見が生まれている。

 日立製作所と住友商事は、採取した尿の代謝物を解析し、乳がん患者、大腸がん患者、健常者を識別する基礎技術開発に世界で初めて成功したと発表した。朗報だ。今後、臨床データを積み上げ、簡便な尿検査でがんの有無が分かる手法の実用化を急ぐという。

 実現すれば、受診者が自宅などで採取した尿を検査機関に送るだけでがんの有無が分かるようになる。似た研究では、意外の感もあるが、ノーベル化学賞を2002年に受賞した島津製作所の田中耕一さんにもある。

 こちらは、病原体が含まれる血液1滴からがんや生活習慣病を発症前に発見する技術への応用を視野に入れている。いずれも検査の簡便さによって早期発見・治療、ひいては医療費低減につながればと思う。

 とはいえ、「がんの情報はあふれていますが、患者家族がどう患者本人を支えたらいいのか、その情報の少なさを実感」(逸見晴恵、基佐江里著『家族のがんに直面したら読む本』、実務教育出版)も事実。がんという疾病の複雑なところだ。