児童相談所(児相)が対応した2014年度の…


 児童相談所(児相)が対応した2014年度の児童虐待相談件数は8万8931件で、ここ15年で7倍以上に増えている。家庭のトラブルの解決に、国、社会の力を積極的に借りなければならない時代なのだろうか。

 子供への虐待防止対策を強化する改正児童福祉法が成立した。虐待の相談に応じる児相を増やすため、東京23区による設置を新たに認めるほか、人口20万人以上の中核市にも整備のための必要な支援を行うことを明記。17年4月に施行される。

 これに対し、時事通信社が行ったアンケートでは、中核市47市の7割強に当たる35市が児相の設置に慎重であることが分かった(小紙30日付)。

 その理由では「専門人材の確保が困難」が22市で最も多く、「財政的な余裕がない」は19市が選択した。記事は「専門人材の育成や財源確保が難しいと感じている様子がうかがえた」と分析している。

 家庭崩壊、家庭力の急速な低下に、行政側の対応が追い付かない。今のところ、それに対処するのに所員の知恵も力も乏しいということだろう。

 戦後、近代化、工業化を推進する方向で都市が造成され、地域社会づくりが進められる中で核家族も増えた。役所の仕事の眼目は、こうした都市化に基づく公共施策の推進だった。家族の一員の救済というような、ポスト都市化の問題はかなり荷が重いのではないか。家庭力の強化についても知恵を絞る必要がある。