喜ばしい科学分野のニュースが飛び込んできた…


 喜ばしい科学分野のニュースが飛び込んできた。理化学研究所が、原子番号113番の新元素について、国際純正・応用化学連合(IUPAC)に発見者として命名権を認められた。

 物質の元となる元素の種類を網羅した元素周期表に、日本発の元素の名前が載ることになる。アジアでは初めての快挙だ。従来、未知の元素の発見や命名は、原子の概念を規定し、実験で確認した欧米が独占していたが、その一角を日本が崩した。

 原子の核である陽子は、その数が増えるほど不安定になり、すぐに壊れて陽子数が少ない元素に分裂しようとする。自然界で発見された元素は92番のウランまでで、93番以降は人工合成で発見されている。しかし、その存在を確認することは極めて難しい。

 今回、亜鉛(原子番号30=陽子数)の原子核を加速してビスマス(同83)の標的に衝突させ、両方の核を融合させるのに成功した。使われた加速器は純国産で、研究者たちが自ら設計、加速器を運転するスタッフらとともに作り上げた。これも誇らしい。

 中心となったのは、理研の森田浩介グループディレクター(九州大学教授兼任)。113番で成果を出した加速器の後継機を使い、すでに119番、120番の新元素発見に着手しているという。

 未知の元素発見の手法を自家薬籠中のものにする勢いだ。物質の根源にかかわる基礎研究の深化は頼もしい限りだ。