2020年東京五輪のメーン会場として…


 2020年東京五輪のメーン会場として建て替える予定の国立競技場(東京都新宿区)について、建築家の槇文彦氏らが、規模を縮小するよう文部科学省や都に要望書を提出した。

 新競技場は8万人収容の観客席などを設ける計画だが、要望書は巨大で周辺の景観を損なうほか、維持費も高額になると指摘。「(規模を)小さくして設計の質を上げれば50年後に誇れる競技場になる」と計画の見直しを求めている。

 当局による従来の箱物行政の失敗、そして後藤新平の「大風呂敷」の時代から、東京では計画に沿って開発された地区が一部にとどまってきたことへの反省を促しているようにも思う。先を見越した開発をということだろう。

 もっともな指摘だが、その一方で「(新競技場の流線形のデザインは)強いインパクトをもって世界に日本の先進性を発信できる」「巨大でも景観を壊さないよう、いかにコンパクトに見せ、周囲に調和させるかが日本の技術、腕の見せどころではないか」という意見も。

 なるほど、外国からの客を迎えるのに少々、見えを切ることも必要かもしれない。都市計画の問題についても「雑多な中で、工夫を凝らしてきた街並みにむしろ東京らしさを感じる」という人が少なくない。

 既に文科省でも建設費をにらみ周辺の回廊を縮小するなどの案が検討されているようだが、メーン会場をめぐる議論は東京五輪開催に向けての課題を浮き彫りにしたと言える。