科学上の新発見を競い合うグループ間で…


 科学上の新発見を競い合うグループ間で「実験装置のノウハウについて、自分たちが一定の結果を出すまでは外で使われないよう」に気遣いすることは常識だ(鈴木洋一郎著『暗黒物質とは何か』)。

 それほどでないにしても、原子力発電事業の現場なども技術革新や安全性確保を追究するため、各国間で競争意識が働き、互いに手の内を見せたがらない。このことが事故のデータなどを広く共有できない理由の一つにもなってきた。

 しかし今度、その困難を克服して、日本と米国の間で原発事故のリスクを評価する統一基準を策定することが決まった。先行する米国の手法を日本が取り入れる形だが、災害や故障、誤操作など原発事故のリスクを数値化し、データを共有することになる。

 日米原子力協定を見直す2018年を機に、安全対策や事故対応力を強化するのが狙いだが、日米両政府の信頼関係が下地になった。こうした分野の情報を共有することは危機管理に大いに役立つ。

 わが国では、1999年の茨城県東海村のJCO臨界事故を教訓に、海外の原発事業体との事故情報共有に向けたネットワークづくりの機運が高まったことがあった。しかし、その後の進展ははかばかしくなく、今回はその反省もあるだろう。

 まず日米間で下準備がいるが、策定後は実績を積み上げたい。それによって、安全性確保のための国際基準作りが進むはずだ。