社会の木鐸(ぼくたく)を自任する新聞は、…


 社会の木鐸(ぼくたく)を自任する新聞は、報道による影響を一つの勲章、と考える傾向がある。だから、その影響について少しでも大きなものだと評価したいのが新聞人の職業的本能である。

 ところが、そうではないこともある。一連の慰安婦報道における「誤報」を認めた朝日新聞は、その国際社会への悪影響は小さいととらえたいところだろう。昨年暮れに発表された朝日の第三者委員会の報告は、結果的にそれに近いものだったと言える。

 しかし、朝日の慰安婦報道を独立した立場で検証する学識者の委員会が先日、公表した報告は、そんな甘いものではなかった。

 独立検証委の報告は、朝日の第三者委報告について「国際社会に与えた影響を極めて限定的に見ている。その結果、国際社会がいまだに『92年1月強制連行プロパガンダ』を信じているため、日本国と先人の名誉が傷つけられていることを軽視した」と批判している。

 独立検証委は朝日誤報によって、韓国や米国などのメディアが、どのような影響を受け変化したかを事細かく分析している。とりわけ、韓国メディアや世論への影響を検証した荒木信子委員は、一連の経緯から朝日報道が「慰安婦問題の『出発点』というのが相応しい」と結論付けている。

 日本の名誉を傷つけたばかりでなく、日韓両国民の間に簡単には修復できない深い亀裂を生じさせた。その責任はあまりにも大きい。