約半世紀前、全共闘という学生組織があった…


 約半世紀前、全共闘という学生組織があった。反体制、反政府の左翼集団で、特定の過激派組織には属さなかった。今では顧みられることも少ないが、雑誌「中央公論」(3月号)が「全共闘とは何だったのか」という小特集を組む程度の存在ではあった。

 全共闘運動に関わって、その体験を踏まえた『僕って何』(1977年)という作品で世に出た作家三田誠広氏は、同特集の中で「資本主義に対する疑念」を背景としていたと述べる。

 だが、それ以上のものではなく、特に成果もないまま、5~6年で運動は終わった。三田氏は「お祭りみたいなもので楽しかった」と振り返っている。

 自分の気持ちにしか関心がなく、運動が社会に与えた影響について考えようともしない全共闘世代を、三田氏より8歳年少の松原隆一郎氏(東大教授)は「無責任、無節操、無反省」と批判する。

 資本主義や政府といった外部には反発するが、他ならぬ自分自身を問うことがない。学生生活が終わればさっさと転向して、資本主義の会社に就職する。思想を捨てる後ろめたさもなく、転向したとの自覚もない。

 今から思えば、この程度の運動だった。その点では、バブルに似ている。一時(いっとき)の熱中はあったものの、時期が過ぎてしまえばそれっきり。全共闘を歴史の中に置いてみれば「そう言えば、そんなものがあった」という以上のものではなかったと思えてくる。