国家主導で起業への追い風


 安倍政権は大胆な規制緩和を進めて新たなベンチャーの起業を支援するという。そのこと自体はいい。だが、わが国の起業、創業活動の歴史を見ると、話は簡単ではない。

 1970年代前半と、80年代半ばに「ベンチャーブーム」と言われるほどの多くの起業があり、それぞれの専門性、開発力が注目された。しかし、倒産する企業も多く、むしろ中小企業を含む産業構造の脆弱性をさらけ出した。

 その後、90年代末に主にIT(情報技術)関連で起業の盛り上がりがあったが、長引くデフレの中で活動は埋没。通信業界の発展方向が見えにくくなったことも、その分野の起業を難しくしたようだ。

 こうして見ると、起業数を増やすことよりも、むしろベンチャー企業を存続させ育成することに支援の力点を置くことが求められる。起業はそれ自体が目的ではなく、あくまでわが国の経済活性化につなげるための手段だとも言える。

 米国では政府がいくつかの中長期的な重点産業を選択することで、ベンチャー企業に参入、躍進のチャンスを与えてきた。わが国でも国家が主導する強力な産業政策がなくては、起業・創業家の活躍の場は今後も極めて限られることを肝に銘じるべきだ。

 ただし東京五輪開催が決まり、都市計画関連の開発事業なども活発になりそうだ。既存の大企業の視野に入りにくいビジネス分野も多くなり、起業への追い風が吹くことは間違いなかろう。