政府が早期の再稼働を目指す九州電力の川内…


 政府が早期の再稼働を目指す九州電力の川内原子力発電所1、2号機(鹿児島県)。再稼働には地元住民の理解が欠かせず、その説得は基本的に自治体の役割だが、そのハードルは決して低くない。

 1970年代、新設原発の立地をめぐり賛成・反対派の説得合戦が全国各地であったが、住民は最後には政治決着に任せた。だが今日、東京電力福島第1原発事故を経て、大半の住民の頭の中で原発の安全神話が崩れ落ちており、再稼働の行方は予断を許さない。

 自治体側も今回、住民との話し合いなど、そのアプローチについては確たるノウハウを持たないようだ。先日、地元の鹿児島県議会議長が、小渕優子前経済産業相に再稼働の必要性や安全性を県民に直接説明するよう要請したのもそんな事情が背景にあろう。

 一般に原発を含めどんな科学技術にも光と影の部分がある。地元住民にそれを発信しながら、反対と賛成の意見にともに耳を傾けた上で、良いコミュニケーションを図って説得する必要がある。

 エネルギー政策、環境問題、省エネの視点から原発の合理的な位置付けを提示しないと納得させられないだろう。川内原発の取り組みは、原発再稼働が軌道に乗るかどうかの試金石であり、今後のエネルギー政策の方向を決しかねない。

 そのために専門的な知識や経験のある人物が必要だが、新経産相の意気込みはいかん。そして与党は「災い転じて福」となせるか。