生命保険協会の渡辺光一郎会長(第一生命…


 生命保険協会の渡辺光一郎会長(第一生命保険社長)が「保育所設置にかかる費用の助成を検討したい」と述べた。政府が人口減少対策として進める保育の受け皿拡充に協力していくという。

 なるほど、国内生保市場の縮小につながる人口減少を食い止めるため、保育所支援もアリかとは思う。株高と円安による運用環境の改善を背景に、業績を回復した自信がうかがえる。だが業界では、先に克服しなければならない課題が少なくない。

 2005年から08年にかけ保険会社が、請求がないなどの理由で保険金を不当に支払っていなかったことが判明。大手生保各社も行政処分を受け、支払い体制の見直しを迫られたが、いまだ改革は道半ばだ。

 さらに経営破綻が相次いだ00年前後の「生保冬の時代」を思い起こしてほしい。販売面では新商品の投入効果が持続せず、財務状況は株価など相場動向に左右されっぱなし。運用利回りが予定利率を下回る逆ザヤの状態が続いた。

 特に逆ザヤ発生は、本業以外の不透明な投資活動が原因の場合も多々あった。業務の適切な運営にはまず保険業の原点に戻ることが肝要だ。勧誘・契約時また担当者引き継ぎの際の顧客本位の対応が求められる。

 地道な社員教育が欠かせず、そのためにはかなりの投資も要る。各社の懐が少々膨らんでいる時こそチャンス。本業の足場を固めた上での保育所設置支援をぜひ願いたい。