20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮のクライマックス「遷御の儀」が無事行われた。…


 20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮のクライマックス「遷御の儀」が無事行われた。たいまつの火に先導され、ご神体の八咫鏡が、新正殿に移される厳かな雰囲気はテレビの画面からもよく伝わってきた

 儀式の始まりを告げたのが、夜明けを告げる鶏鳴を模した「カケコー」の声。天の岩戸の故事によるもので、記紀神話が今も生きているのを見るのは感動的だ

 式年遷宮で新しく建て替えられるのは、内宮、外宮の正殿だけではない。境内の全ての建物、宇治橋も新築される。使われる檜の数も約1万本と半端ではないが、古い社殿の木材は全国の神社でリサイクルされる。日本文化の古層が凝縮された式年遷宮には「もったいない」の思想も含まれている

 今年は5月に、島根県・出雲大社でもほぼ60年に一度の遷宮が行われた。伊勢神宮は天津神の天照大御神、出雲大社はその子孫に国譲りをした国津神の大国主大神を祀る。国津神は、いわば敗れた側、追われた立場の神である

 世界の宗教史を見れば、敗れた側の神々は、抹殺されるか極端に貶められるのが普通である。それが日本では、勝者と敗者が共存している。このこと自体が奇跡と言っていい

 今年は、伊勢の神様、出雲の神様がともに新居にお移りになる特別な年。日本が新しく歩みだすには、最高の運勢の年と言える。富士山の世界文化遺産登録や2020年の東京五輪開催決定なども偶然とは思えないのである。