「親の仇(かたき)と魚は見たらとれ」とは…


 「親の仇(かたき)と魚は見たらとれ」とは、日本の漁師たちが昔から伝えてきた教訓であり、職業的本能と言っていい。どれだけでも魚がとれた資源の豊かな時代はそれでもよかった。しかし、水産資源の管理に黄信号がともった今、それは通用しない。

 日本の漁業生産はピークの1984年頃の半分以下に落ち込んでいる。水産庁は資源回復策に本腰を入れ、太平洋のマサバ漁で漁獲可能量を漁船ごとに割り当て管理する「個別割り当て(IQ)方式」を試験的に導入する方向だ。

 もちろん、国がこれまで何もやってこなかったわけではない。サバやマイワシなど7魚種を対象に毎年、総漁獲量を決める「漁獲可能量制度」を97年から採用してきた。しかし顕著な効果は表れていない。

 この制度では、早く沢山とった方が勝ちということになり、漁獲競争を招いてしまう。個別割り当てになれば、いい値が付く大きめの魚を選別してとることも可能となり、資源保護にも経営にもプラスとなる。

 全国に先駆けて新潟県では、ホッコクアカエビ漁でIQ方式を導入。佐渡の赤泊などで成果が上がりつつある。

 もちろん漁業者たちが、長年の職業習慣を改めるのは簡単ではない。「魚は育てて時を見てとれ」へと転換するには、成功事例がはっきりと示され、それがビジネスモデルとなるかどうかが大きい。新方式でのマサバ漁や新潟県での取り組みに注目したい。