日本に現存する最古の歌集と言えば、天皇から…


 日本に現存する最古の歌集と言えば、天皇から庶民までの和歌を集めた万葉集である。今に続く日本人の精神文化のルーツと言ってもいい。例えば日本人の愛する桜も、和歌の題材として数多く登場する。

 当時、歌集を編纂(へんさん)することは国家的な事業でもあった。古今和歌集や新古今和歌集などは天皇の命による勅撰和歌集だ。それ以降も多くの歌集が編まれた。

 和歌の力を認め、それを積極的に活用したのは、人の感情を和やかにするためだった。古今和歌集を編纂した紀貫之の「仮名序」にも、和歌は鬼神の心も動かすというような表現がされている。

 和歌は万葉集以来、その時代時代の人々の心のありよう、移り変わりを示した文学であり、その意味ではどの歌集にもそれなりの成立背景がある。ただし、特に万葉集が尊ばれるのは意味がある。古今和歌集などは貴族たちによる宮廷文学の性格が強いが、身分の低い人から高い人までの和歌を集めた国民的な歌集は万葉集しかないからである。

 和歌が詠み続けられる中で、時代ごとの精神文化を反映させながら過去の表現を踏襲したり革新的な表現を生んだりした。そして現在の和歌ブームの火付け役になったのは、俵万智さんの口語による歌集『サラダ記念日』(1987年)だろう。

 その一首「この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日」にちなみ、きょうは「サラダ記念日」になっている。