「かきくもる空より雹(ひょう)をたゝきつけ」…


 「かきくもる空より雹(ひょう)をたゝきつけ」(夏目麦周)。先日、東京都三鷹市や調布市の一部で突然、雹が降り驚かされた。全く考えもしなかったことだ。このところの雷雨や豪雨は異常なほどで、夏の暑さが思いやられる。

 サッカーW杯ブラジル大会ではザックジャパンが1次リーグ敗退に終わった。事前の期待が大きかっただけに、気落ちした人は少なくないだろう。敗因についてはいろいろ言われているが、スポーツには時の運もあり、ここでは触れない。

 ただ、その日本代表が帰国した時、出発時の700人を上回る1000人のサポーターが出迎えたことには驚かされた。罵声(ばせい)を浴びせることはあっても、敗退したチームをこれほど温かく迎える国はそうないだろう。

 もともと日本には「判官贔屓(びいき)」という言葉があるように、勝者よりもむしろ敗者を贔屓する気質がある。図らずも、その心情がサポーターの出迎えの際に表れたと言っていい。

 敗者をいたわる心は、東日本大震災の被災地で見られた助け合いやいたわり合いの光景とも、どこか重なるものがある。これも、日本人の伝統的な精神文化が自然に表出したものと言えよう。

 温かい出迎えに、選手たちは戸惑いを隠せなかったようだ。FWの大久保嘉人選手は「もっと厳しい声を覚悟していた」と述べている。今回は敗れたといっても、スポーツはまたチャレンジの機会がある。4年後に向けて選手たちの奮起を望みたい。