普通に「虫」でいいのに「虫けら」と言う…


 普通に「虫」でいいのに「虫けら」と言う場合がある。「虫けらのように扱われた」と言えば、いい扱いを受けた様子はない。逆に、ホタルのように昔から好まれている虫を虫けらとは呼ばない。

 虫けらの「けら」は何を意味するのかよく分からないらしい。「ケラ」という昆虫はいるが、関係はなさそうだ。俗に「オケラ」と呼ばれるケラは、コオロギの仲間。土中で生活し、前足は土を掘るのに適した形をしている。オスの鳴き声は「ジージー」。ミミズのものだと言われることがあるが、ミミズは鳴かない。

 長虫は蛇のこと。爬虫類なのに虫と呼ばれる。クモだって昆虫ではないが、一般には虫と言われる。そう言えば、蛇という漢字は「虫偏」だ。

 虫は、昆虫を含みながらより広い範囲を示す言葉のようだ。「虫がいい」「虫の居所」「虫唾が走る」など、虫にまつわる言葉は多い。

 一般に虫は、否定的な意味で使われることが多い。「虫がいい」と言った場合、その当人にとって都合がいいのであって、周囲にとっては迷惑なことが多い。「虫の居所」という言葉が用いられるのは、機嫌の良くない状態を表現する時に決まっている。「虫唾が走る」が、いい印象を表す言葉として使われることは全くない。

 どうやら虫は嫌われ者のようだ。「一寸の虫にも五分の魂」のように肯定的に使われるケースもあるが、例外だ。どうやらそれが、虫にまつわる現状のようだ。