不可視のもの、超越的なもの、いわゆる精神…


 不可視のもの、超越的なもの、いわゆる精神世界の領域を写真で表現することは可能なのだろうか。この興味深いテーマに挑んだ写真展「スピリチュアル・ワールド」が東京都写真美術館で開催中。

 「なにごとのおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」と平安時代の歌人、西行は伊勢神宮参拝の折に詠んだ。この歌に表れた感性や精神は、古来日本で培われてきたもの。

 このテーマを決め、収蔵作品約3万点の中から展示作品を選んだのは学芸員の石田哲朗さん。「近代化の過程で失われていった非合理的なもののなかには、未来への手掛かりが隠されているかもしれない」と狙いを述べる。

 「神域」「見えないものへ」「不死」「神仏」という主題別に構成。明治、大正、昭和、平成と、時代も表現も異なるが、さまざまなイメージの中に日本的感性といったものが浮かび上がってくる。

 1953年に渡辺義雄によって撮影された伊勢神宮内宮正殿の棟飾りがある。同じ被写体を93年に撮影した石元泰博の作品と比較すると、40年という時間の隔たりがあったことは感じられない。

 個性の異なった2人の作品に象徴されるように、悠久な時を考えさせる作品展だ。「不死」の被写体は富士山。四季の移ろいがあり、時代による色彩感の違いがあっても、富士山の永遠性が表れている。今の時代に神聖なものを確認することの意味は大きい。7月13日まで。