坂本龍馬の手紙の草稿がこのほど発見された。…


 坂本龍馬の手紙の草稿がこのほど発見された。暗殺(慶応3年11月15日)の直前に書かれたもので、倒幕後の新政府の構想などが記されたものだ。

 手紙の内容が重要なのはもちろんだが、発見のいきさつが面白い。お笑いコンビの「バイきんぐ」が、NHKの番組の街頭インタビュー(東京)の中でたまたま出会った主婦の家に草稿があることを聞いた、というのが発端だった。

 この手の話の場合、99%が贋物、と考えるのが普通だろう。ところが今回は、残り1%の稀なケースだった。街頭インタビューがなければ、龍馬の手紙は永遠に世に出ることがなかった可能性が高い。ちなみに手紙は、古美術商から1000円で買ったものだという。

 今回の発見劇には多分に偶然が働いているが、中には意図的に偶然をつくり出してひと儲けしようとする者もいる。1993年初頭から数年間大論争となった洋画家・佐伯祐三(昭和3年没)贋作事件もその一つだ。

 発見者の女性は、借りて住んでいた寺の奥の部屋で、151点に上る佐伯の絵を発見したとして名乗り出た。龍馬の草稿が主婦の自宅のちゃぶ台の下から見つかったのと状況はよく似ている。が、鑑定の結果、贋物と断定された。裁判にまで持ち込まれたが、判決でも贋物とされた。

 佐伯の作品でないことは明らかだが、では誰が151点もの贋作を描いたのかは、事件から20年経った今も明らかになっていない。