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村上春樹氏は当代随一の人気作家。…


 村上春樹氏は当代随一の人気作家。ノーベル賞に最も近いと言われる日本人作家でもある。それだけに、氏やその作品に対する批判はあまり聞いたことがない。礼賛、称賛の声ばかりだ。

 それでも噂話は文壇内部には伝わる。ある文学賞を受けるに当たって「写真撮影はしない、話し掛けない」という普通では考えられない条件を突き付けて受賞した、といった話だ。もちろん、こんな話が報道されることはない。

 ところが今月初頭、北海道北部の中頓別町町議6人が、昨年末に月刊誌「文藝春秋」に発表された氏の短編小説の中に「中頓別町ではたばこのポイ捨てが普通のこと」とあったことについて、真意を問う質問状を送るということがあった。

 もともと気難しくもある村上氏がどう対応するか注目された。結局、単行本化された時には町名を変更する、との意向を示すことで一応の決着となった。

 たかが小説の表現に町議が文句を言うのもいかがかと思えるし、村上氏も妙にあっさりと屈服してしまったな、という印象も残る。

 そう言えば、三島由紀夫『青の時代』(昭和25年)冒頭近くには「K市は由来低脳児の多い町である」という記述がある。千葉県内のある市のことを指しているのだが、K市民にとっては「たばこのポイ捨て」どころの話ではない。昔が暢気な時代だったと言うべきか、今の日本が神経質になり過ぎたと考えるべきか。