昨年の盛夏、京都の寺社巡りをした。名立たる…


 昨年の盛夏、京都の寺社巡りをした。名立たる寺院には、若いカップルや家族連れ、外国人観光客らが早朝から詰め掛けていて、近年の仏像ブームを改めて確認した次第。

 日本には大仏のような巨像から誕生仏のような小さなものまで、さまざまな大きさの仏像がある。その中でも先日、大津市の寺院「新知恩院」の土蔵から見つかった木造涅槃(ねはん)像は体長12・8㌢と極端に小さい。日本には自生しないビャクダンを彫って作られたものだ。

 釈迦入滅を描いた涅槃図は多いが、涅槃像は全国で三十数例しかない。しかもほとんどが約180㌢の等身大か、その半分の約90㌢で、この大きさのものは他にないという。

 寺院に安置された仏像は大勢に拝まれ、僧たちの修行を見守ってきた。一方、この涅槃像は手のひらに載るほどの大きさで、位の高い僧侶が持ち歩くために作られたとみられている。如来(神)と我、といった信仰の確立を目指したのだろうか。

 この像は胸の部分に縦2・5㌢、横1・5㌢の水晶をはめる技法が用いられており、釈迦の体から光が発せられる様子を表している。目や爪、歯などに水晶を使った仏像は鎌倉時代にも見られるが、胸は例がない。

 顔の輪郭や表情などから鎌倉時代の仏師快慶の作と考えられているが、日本の仏像史上どんな位置づけになるのか、専門家の今後の研究を待ちたい。8日から大津市歴史博物館で公開される。