ポリオとの戦い


地球だより

 「小児まひ」ともいわれたポリオだが、日本でこそ昭和の時代に根絶されたものの、アジアやアフリカではいまだに悩まされている国がある。パキスタンや隣国のアフガニスタン、それにアフリカのナイジェリアの3カ国だ。

 WHO(世界保健機関)によるとポリオは感染力が強く、この3カ国で根絶できなければ、グローバル時代の今日、人の移動などによって世界に広がる懸念があると警告している。

 パキスタンでなぜ、根絶できないのか。

 ポリオは口から入ったポリオウイルスによって感染する病気だ。排泄物などを介して、感染が広がっていく。確実な治療法がないため、ワクチンを複数回接種し、予防することが重要となるが、パキスタンでは住民の不信感という特有の大きな壁が立ちはだかっている。

 年初には全国一斉のワクチン接種キャンペーンが行われ、全国5歳以下の子供400万人に経口ワクチンを投与しようと、ポリオワーカーと呼ばれる専門の担当者が各家庭を回った。

 だが、このポリオワーカーが外国のスパイだとのうわさが広がっていて、活動を妨げているのだ。2年前にオサマ・ビン・ラディンが潜伏先のパキスタンで米軍部隊の襲撃を受け殺害されたが、この作戦で米軍はパキスタンのポリオワーカーに扮した協力者を潜伏先に接近させ、手掛かりを得たとされる。

 この影響から、イスラムの女性たちが、ポリオワーカーたちをスパイだとして、襲撃する事件も後を絶たず、2012年からこれまでに48人も殺害されている。保健衛生キャンペーンながら、現場では文字通り命懸けの戦いを強いられている。

(T)