拡散するアラブ陰謀説


地球だより

 フランスは2015年からイスラム過激派によるテロが何度も起きたことから、テロと言えば、イスラム系アラブ移民が起こすものと思われがちだ。しかし、実はイスラム教礼拝堂モスクやユダヤ教礼拝堂シナゴーグが襲撃される事件もあり単純ではない。

 仏内務省のデータによると、2018年に起きた反ユダヤ主義を動機とした建物などの破壊及び強奪行為が102件(全体の18・9%)、殺人事件及び殺人未遂事件を含む81件(全体の15・0%)、脅迫は358件(全体の66・1%)起きており、急増中だ。

 パリ13区の郵便ポストに描かれた強制収容所生還者で政治家だった故シモーヌ・ヴェイユ女史の肖像画に鉤十字の落書きがされ、国民に衝撃を与えた。

 フランスには欧州最大規模の約60万人のユダヤ人が住み、パリ首都圏だけでも約70のユダヤ人学校がある。一方、イスラム教徒も欧州最大規模で約500万人に達するのにイスラム教徒の学校はない。北アフリカ出身のアラブ系移民が、フランスで支配的な白人社会に取って代わろうとしているという陰謀説が、若者の間で広まっている。

 ニュージーランド・クライストチャーチで50人が死亡し、約50人が負傷したモスク銃撃事件で逮捕・起訴された豪州国籍の白人の男は、2年前にフランス滞在中に北アフリカ出身のアラブ人の多さを見て、テロ計画にインスピレーションを得たとしている。

(M)