黄色いベストと革命


地球だより

 ガソリン税引き上げに端を発した黄色い安全ベストを身に着けたフランスの抗議運動は、6週目を迎えた。先週はなんと抗議デモのエスカレートで、取り締まる側の治安部隊を構成する警察官までも待遇改善の抗議デモを行った。残業代未払いや過重労働、低賃金に抗議してのものだった。装備品の老朽化も問題になっており、中には身に着けるプロテクターなどを自分で購入し、高額負担しているケースも明るみに出た。

 フランスでは普通に起きる一般市民の抗議文化だが、そのスタイルは今回のように道路交通網を遮断したり、高速道路料金所を全国でいくつも放火したりするように、一般市民の生活、商業活動に深刻なダメージを与える手法が多い。破壊した後で料金所の再建費用を誰が支払うのか、揉(も)めたりもする。

 結果的に政府への抗議運動で生じた企業の損失は、政府が補填(ほてん)しており、これも国民の税金から支払われる。一方で、今回のデモで1カ月の収入が40%も減った町の小さな商店や美容院などは、誰も助けてくれないと嘆いている。

 ところが、抗議運動に対して、フランス人は常に一定の理解を示す。そのことについて英国やドイツメディアは、1789年のフランス大革命を引き合いに出す。フランス革命は市民蜂起という形を取ったことで、常に絶対権力者に対して怒れる市民が立ち上がり、最後は権力トップの首を取るスタイルが定着しているというわけだ。

 実際、黄色いベスト運動のキャッチフレーズは「マクロン仏大統領は辞任しろ」というものに変わっていた。革命を起こしてしまった国では歴史が繰り返されるというわけだ。

(A)