人食い海水ワニを捕獲


地球だより

 フィリピン最西端のパラワン州で、全長が5メートル近くもある巨大なイリエワニ(海水ワニ)が捕獲され話題となっている。

 先月末に行方不明になった漁師の遺体の一部が発見され、それにワニのものと考えられる咬傷が確認できたため、「人食いワニ」の捕獲作戦が実行されたのだ。

 この地域では住人がワニに襲われるのは珍しいことではないという。10月にも16歳の少年が危うくワニに襲われそうになったが、危機一髪で逃げ出すことができた。

 11月から2月ごろにかけて、繁殖期を迎えたワニの活動が活発化するため、専門家は住人に注意を呼び掛けている。

 マニラ首都圏に住んでいると大量のごみが浮かぶ汚染された川や、自動車の排出ガスですすけた風景など、南国の自然を感じられる要素は暑さ以外皆無と言っていい。しかし地方に行けば、こんなに巨大なワニを育むことができる、秘境のような自然がまだ残されているところにフィリピンの多様性を感じる。

 とはいえ専門家は、ワニの襲撃が相次いでいる原因は、生息地であるマングローブ(熱帯・亜熱帯地域の海岸や河口の森林)の減少であると指摘している。すみ処(か)を失ったワニが人間の住む地域に、進出せざるを得なくなっているのだ。

 各地のリゾート地で深刻化する環境汚染の状況を見る限り、巨大ワニの存在が昔話となるのも、それほど遠くない未来のような気がしてならない。

(F)