コーヒー全盛時代


地球だより

 韓国でコーヒー専門店の創業ラッシュが止まらないというニュースが、先日報じられた。フランチャイズ加盟店、個人店舗ともに開業増加勢が続いていて、それよりは安価な、コンビニに置いてあるマシーンによるいわゆる「コンビニコーヒー」の売り上げまで好調だという。

 ソウルの繁華街を歩けばコーヒーショップの看板があちこちにあり、選ぶのに迷うことはあっても探すのに困ることはまずない。値段は1杯4000ウォン(約400円)以上がほとんどで昼食代並み。それでも客足は途絶えない。

 記者が初めて韓国を訪れた90年代初め、コーヒーと言えば「茶房(タバン)」と呼ばれる喫茶店に行って飲むか、100ウォン(約10円)硬貨1~2枚で買える自動販売機のものがほとんどだった。茶房はレトロな雰囲気で、だいたい従業員のアガシ(未婚女性)が横にピッタリ座り、おしゃべり相手になる。決して美味しいとは思わなかったが、砂糖とミルクをどっさり混ぜたあの甘苦い独特の風味がくせになったものだ。

 昼食後のコーヒータイムに記者仲間の韓国人が、日本統治期にロシア公館に避難した朝鮮王朝末期の王、高宗がロシアンコーヒーを嗜(たしな)んだという話を知っているか、と聞いてきた。コーヒーに毒を盛られ死んだという説もあり、大韓帝国建国を目指した高宗と、高宗暗殺を命じられるも愛国心に目覚め改心する王室付き女性バリスタが登場する歴史映画が、数年前に公開された。

 ただし、高宗とは関係なしに今巷では断然アメリカンが多く、ロシアンにはなかなかお目にかかれないが…。

(U)