短くも最長の登山鉄道


地球だより

 ベトナムのお勧め観光地は、海ではハロン湾、山ではサパだ。どちらもハノイに近い北部にあるのだが、ダイナミックな景観がいい。「海の桂林」とも呼ばれるハロン湾は、石灰岩でできた島々が切り立った断崖絶壁を形成し、見る者を圧倒する。

 一方のサパは、高原地帯で夏もかなり涼しく、フランス統治時代に避暑地として開発された高原リゾート地だ。何よりサパには、「インドシナの屋根」と呼ばれるベトナム最高峰のファンシーパン山がある。標高は3143メートルで、外国からの登山観光客も多い。

 ベトナムでの山登りは格別だ。普通の登山は眺望が開けたり、自然を堪能するわけだが、ベトナムでは時間の旅をも提供してくれる。というのも、山間部には段々畑が広がっていたり、少数民族の部落があったりと、山によっては400~500年前のベトナムを覗(のぞ)き見ることも可能だからだ。

 そのサパで今春、ファンシーパン山に続くロープウエーの駅とを結ぶベトナム最長の「ムオンホア登山鉄道」が運行を始めた。「最長」とはいえ鉄道の全長は、およそ2キロと短い。ただ他に登山鉄道があるとも思えないので、「国内最長」となった模様だ。いわば、人目を引き付けるキャッチコピーとしての「最長」だが、私が広報なら「500年前へのタイムトリップ」を強調する。

(T)