平昌パラの脱北アスリート


地球だより

 平昌パラリンピックが開幕し、出場選手たちの人生ストーリーがさまざま紹介されているが、男子アイスホッケーの韓国代表で出場中のチェ・グァンヒョク選手(31)の場合、「四つの人生」を歩んできた若者として話題になっている。チェ選手は北朝鮮に生まれ、2001年に脱北した後に韓国に定着した。つまり脱北の前と後、体に障害を負う前と後の合わせて4通りを経験した稀有(けう)な存在だ。

 まだ北にいた頃、家庭不和のあおりでコッチェビ(浮浪児)になり電車の外側につかまって停車中に車中に入り込み、アイスクリームを売って生き延びた。13歳の時、走行中の電車で足を踏み外して転落し重傷を負った。それが原因で左足を失い、お偉いさんなどが来ると後に隠れるようにしていないと駄目だったほど北で障害者は惨めだったという。韓国に来れば来たで脱北者に対する差別や無理解などの壁が待っていた。

 自暴自棄になった時期もあったが、4年前に転機が訪れた。義手義足の製造を学んでいた時に出会った先生からアイススレッジホッケー(下半身障害者ホッケー)を勧められ、競技を始めてわずか3年あまりで国家代表に抜擢された。

 五輪という夢のような舞台に立ったチェ選手は今「全てを肯定的に考えられるようになった」。通常の五輪では観ることができないドラマがパラにはある。

(U)