盛り上がらないブラジル大統領選


地球だより

 南米の大国ブラジルの大統領選は、地域の外交や経済に影響を与えるだけに、その動向はブラジル国内のみならず近隣諸国にも注目されるものだ。

 例年であれば、目玉となる有力候補同士の対決で盛り上がるが、今年はそれが少しばかり欠けている。左派労働党のルラ元大統領が今年1月、汚職裁判で有罪判決を受け、出馬が事実上閉ざされたことが大きい。有罪判決前のルラ氏は、汚職疑惑が取り沙汰されながらも40%近い支持を受けていた、まさにカリスマ政治家だ。それだけに、ルラ氏が出馬していれば、対抗馬を含めてブラジル世論を大きく割るほどの選挙戦となったのは間違いない。

 最近では、ブラジルで最も有名な司会者である「グローボ局」のルチアーノ・ハック氏が2月中旬、大統領選に出馬しないことを正式発表した。ハック氏をめぐっては、中道ブラジル社会民主党のご意見番ことカルドゾ元大統領が「間違いなく大統領候補として推薦できる」と述べ、大きな注目を集めていた。

 ハック氏は、ツイッターのフォロワー数が1300万人に迫るほどの超有名人で、番組内で見せる人柄も手伝って国民からの人気もあった。政治に「もしも」という言葉はないが、貧困層や労働組合から絶大な支持を集めるカリスマ政治家のルラ大統領と、フォロワー数1000万人超えのカリスマ司会者の一騎打ちは、ブラジル人なら誰もが見てみたかった対決だろう。

(S)