南半球の年越しに思う


地球だより

 ブラジルに住んでみて面食らうことの一つに年末年始の感覚がある。日本であれば、忘年会や仕事納め、大掃除や年越しそば、紅白歌合戦に除夜の鐘、加えて年始の初詣など、一年の終わりを総括し、新たな年を心機一転して迎えようという行事が数多くある。

 しかし、クリスマスを終えたブラジルでは、年末年始は新年を迎える瞬間に花火が打ち上がる以外は、家族や親族が集まって新年を迎える程度だ。信心深い家では、家族が集まって聖書を読みながら新年を迎えることもあるが、年末年始にかける想(おも)いは日本人とは大きく異なる。

 さらに、ブラジルの気候と季節感が北半球から来た者の感覚を麻痺(まひ)させる。年末年始の真夏の暑さと連日のスコールは、日本で生まれ育った者の年越しに対する感覚と想いを打ち砕くに十分だった。

 そんなブラジルで迎えた新年、今年は知己の日本にルーツを持つ家族が集まり、新年会を開いた。前夜に国際放送から録画しておいた紅白歌合戦を鑑賞しながら、持ち寄った雑煮やそば、縁起物の料理などを皆で楽しみ、最後はカラオケ大会となった。

 海外で日本の絆に触れ合う新年、郷愁を癒やす時間になると同時に、深まる故郷や日本への想いが、文化、民族、人種のるつぼの中で暮らしていることに根付いていることを思い出す一日となった。

(S)