黄金の戌年


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 希望の新年を迎えた。六十甲子(干支)の35番目に当たる戊戌の年だ。十干の戊と十二支の戌の漢字が似ている。「戊」に「一」を加えると「戌」だ。モバイルPCに届いた年賀状はどれも犬の絵が描かれている。かわいい姿や堂々とした姿などさまざまだ。十干で「戊」と「己」の色が黄色なので戊戌の年は「黄金の戌年」だという。青馬とか黒龍、黄金豚とかいうのは全て商売人が作った言葉だろうが、それでも黄金の戌年は耳当たりがいい。

 犬ほど長く人間と交流した動物はない。先史時代に牛や豚、羊よりも早く人に飼いならされた。人と犬の物理的な距離は歳月の流れとともに近づいている。狩り場から前庭を越えて家の中に入り、今は主人と寝床を共にする伴侶犬までいる。これを飼ってみると、心の慰めを感じることが多い。会社から疲れ果てて帰宅するとかわいいしぐさで喜び、眠っている主人を誰かが起こせば、自分が守るんだとばかり唸(うな)り声を上げたりもする。

 戌年といえば、“58年(1958年)戌年”の話は外せない。韓国の現代史の曲折をそのまま体験した世代だ。彼らが生まれた年はベビーブームの頂点だった。初等学校を2部制、3部制で通わなければならず、中・高校を抽選で進学した“伝助賭博(街頭詐欺賭博の一種)の第1世代”でもある。学生時代は緊急措置(朴正煕政権の維新憲法に基づく特別措置。学生などの反政府活動を禁じるために使われた)とソウルの春(79年10月朴大統領の死後、80年5月戒厳令までの民主化ムードの高潮期)、光州抗争(同戒厳令に反発し光州で起こった民衆蜂起)などの大変革を体験し、社会人になって直(す)ぐに不動産の暴騰を経験した。1997年の金融危機の時は“45停”(沙悟浄と同じ発音、45歳停年のこと)と“38線”(南北を分かつ38度線と同じ発音、38歳早期退職のこと)の犠牲者となった。彼らが今年、還暦を迎える。

 厳密に言えば来月16日の旧暦の元日が戊戌の年の始まりだ。それでも壁には2018年の新しいカレンダーを掛けた。昨日と今日はカレンダー一つの違いだけだが、意味は全然違う。世の中の暮らしはそういうものともいえるが、昨年は苦しくて悲しくて記憶したくないことが多かった。文字通りの激変の一年だった。その全てを昨日までのカレンダーと一緒に時間のゴミ箱に捨てよう。そして今日は今日の太陽が昇る。今年は良いこと、楽しいこと、長く心にしまっておきたいことが多いはずだという希望を抱いてみよう。 (1月1日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。