寂しく佇む大統領記念館


地球だより

 2002年サッカーワールドカップ日韓共催のため造られたソウルW杯競技場の西2キロの場所に、朴正煕元大統領の記念館がある。韓国で朴元大統領と言えば「漢江の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を牽引したリーダー像と日本統治下で陸軍士官だった親日派的な顔が混在し、評価が分かれることもあるが、経済分野の功績は歴代大統領の中で群を抜いている。日本人の立場で言わせてもらえば、反日感情が凄かった時代に日本との国交正常化を決断した「未来志向の人」だった。

 記念館では今年、誕生100年の節目に合わせた企画展をやっているが、驚いたのは足を運ぶ人の少なさ。駅から徒歩圏外なのが致命的だが、そもそも記念館の用地設定は朴元大統領の指示で日本から拉致され、日韓外交問題に発展したあの政敵、金大中元大統領が決めたそうだ。金元大統領と同様に朴元政権の「軍事独裁色」に批判的だった盧武鉉大統領の場合、財源不足を理由に記念館建設を一時ストップさせたという受難の歴史がある。

 そして受難はまだ続いている。先日、記念館の石碑に朴元大統領を中傷する落書きが発見され、誕生100年事業として計画された記念切手の発行は、「見えざる圧力」によって中止に追い込まれてしまった。娘の朴槿恵前大統領が、国政介入事件の判決公判を迎える日も近づいているせいか、記念館の佇まいはどこか寂しく感じられる。

(U)