北も南も楽じゃない?


韓国から

 数年前のことだったと思うが、韓国に定着する脱北者たちの間で手軽な小遣い稼ぎの口があるという噂が流れたことがあった。メディアやポータルサイトのホームページに入って「左派叩き、右派擁護」の書き込みをすれば、政府がアルバイト料を支給するというものだった。

 「左派=親北=悪」という発想を持つ脱北者たちを中心に飛び付き、確か書き込み10件当たり数万ウォン(数千円)をもらって帰ったと聞いた。

 そんな脱北者の「書き込み部隊」に批判の目が向けられている。ある脱北者団体が組織ぐるみで左派叩きの書き込みに加担していたことが分かったが、それが大統領選直前に情報機関が保守世論を拡散させるために政治的書き込みを指示した時期にちょうど重なっていて問題だと、あるメディアに報じられた。この団体は事実無根だとして猛反発しているが、文在寅政権は政治介入など違法行為が発覚すれば登録抹消するといささか高圧的だ。

 北朝鮮の圧政や人権蹂躙(じゅうりん)、食糧難などから逃れるため自由民主主義の国、韓国に来た脱北者たちだが、北朝鮮に融和的な政権の誕生を機に「良かれ」と思ってやったことが裏目に出た格好だ。北ではひたすら「ああ首領様(金日成主席)、ああ将軍様(金正日総書記)、ああ最高司令官同志(金正恩朝鮮労働党委員長)」と言わなければ安泰が保障されなかったが、南では政権交代で世の中が180度変わる。彼らにとっては北も南も大変だ。

(U)