パリ5区に引っ越す理由


地球だより

 中国には孟母三遷という言葉があるが、フランス人の親も有名公立進学校に子供を通わせるため、校区内に引っ越すケースが少なくないという。たとえばパリ5区のカルチェラタンにある公立のルイ=ル=グラン高の卒業生は、フランスの超エリートを形成しているので、とりあえず、校区内に住みたい家族が引っ越して来るらしい。

 フランスでは、高校卒業(バカロレア)が実質、大学入学資格試験となる。バカロレアの成績が良ければ、特別なエリート教育をする専門大学(グラン・ゼコール)に行く道が開かれる。グラン・ゼコールを卒業すれば生涯が保障される。

 今月発表された6月の就職状況では、管理職クラスの就職率が上昇している。管理職と言っても、50歳前後の中高年だけの話ではなく、新卒採用でもグラン・ゼコール卒であれば、いきなり管理職として採用されることもフランスでは少なくない。

 そのため、教育熱心な親は子供が小学校の時から進学実績の高い公立の中学・高校がある校区に引っ越し、夢を実現しようとする。校区の不動産価格は勢い高騰する。不動産業者もそのことは理解しており、わざわざ物件広告に校区名を入れたりしている。

 公立校でも越境は特例としてあるが、子供が小さい時から有名校の近くに住むことで意識を高めようという親もいるようだ。

(M)