ひったくり事件に思う


地球だより

 先日、サンパウロ市内を歩いていると、すぐ後ろから「泥棒だ、助けてくれ」という大声が聞こえてきた。驚いて振り返ると、ほんの数㍍先で30代の白人男性が大声を出しており、その先に走り去る若い男の姿があった。

 白人男性が盗(と)られたのはバックパックだった。記者がその場で持っていたのも同様のバックパックで、カメラやパソコン、身分証明書など貴重品が詰まっていた。この白人男性より背が低く、年齢も上の記者が狙われなかったのは、ただの幸運にすぎないと感じた。

 ブラジルの犯罪発生率は、日本に比べてとても高い。サンパウロ市では近年、日本の交番制度(KOBAN)などを活用して犯罪抑止効果を挙げていると聞くが、それでも日常生活の中で犯罪に出遭う確率は決して低くない。

 それ故、日本に一時帰国すると、メガシティー東京であっても夜の街を安心に歩くことができ、駅のホームなどで酔いつぶれているサラリーマンの姿を見ては、思わず「これがブラジルだったらどうなるだろう」と比較してしまう。

 もちろん、ブラジルにはブラジルの良さがあり、日本や日本人がこうであったらと思うこともある。ただし、治安に関しては、日本の犯罪率の低さと検挙率の高さは世界に誇れるものだ。世界から日本を訪問する観光客にとっても、安心感が日本観光を選択する大きな理由の一つになればよいと願っている。

(S)