南北鉄道に潜む野望


地球だより

 今から10年前、韓半島分断以来、約半世紀ぶりに韓国と北朝鮮を往来する鉄道の試運転が実施され、大きな話題になったことがある。半島西側を走る京義線の韓国最北端、汶山駅に入ってくる列車を汗だくになりながら取材したのを思い出す。当時は対北融和政策の盧武鉉政権。セレモニーではやたらニコニコ顔で話し掛けようとする韓国の李在禎統一相に、北朝鮮の権浩雄内閣責任参事(閣僚級)が横柄な態度で応じていたのが印象的だった。

 鉄道連結は試運転が行われたきり実現しなかったが、盧政権ナンバー2だった文在寅氏が大統領となり、再び南北鉄道連結に意欲を燃やしている。先日、韓国・済州島で行われたアジアインフラ投資銀行(AIIB)の年次総会で演説し、「南と北が鉄道で結ばれた時、新しい陸上・海上シルクロードが完成する」と述べた。

 AIIBは中国・習近平主席の肝煎りでスタートしたシルクロード経済構想「一帯一路」を金融支援するとみられている。どうやら大統領の狙いは中国の構想に加わることでAIIBに北朝鮮投資を承諾させ、自らの構想を実現させようというものらしい。

 10年前の試運転は本格的な鉄道連結には至らなかったが、これを呼び水にわずか5カ月後には7年ぶり2回目となる南北首脳会談が実現している。今回の鉄道連結構想にもそんな政治的野望が潜んでいるのだろうか。

(U)