100年ぶりの嵐 街を歩く市民


地球だより

 モスクワでこの時期の天敵は、泥水から発生してくる蚊とポプラ(トーポリ)の綿毛。両方にアレルギー体質を持つようになった筆者にとっては、この時期エアコンを使わなくても快適な季節でありながら、天敵の窓からの飛来を防止する対策は必須だ。

 60年代、フルシチョフ首相の命令でモスクワの街に急遽(きゅうきょ)植えられ、現在でも10万本残ると言われるトーポリの木を、近年の都市計画で1年当たり1万本を伐採し、街角に綿毛の吹きだまりができることを減らしてきた。今年は全く違和感を感じない。

 その理由は伐採だけでなく、5月29日にあった強風災害の影響もあるようだ。16人が死亡、150人以上が重軽傷を負うなどした、雷、暴風、雨、ひょうを伴った突然の嵐がモスクワ近郊を襲い、綿毛の芽なども洗い流した。モスクワがこの100年、これほど強力な嵐の被害に遭ったことはないという。そんな中でも、モスクワ市民はこの時とばかりに、この被害の模様を携帯電話で撮影しようと面白がるやからが、街に繰り出した。災害の恐ろしさを知る日本人は台風の際は一般的に外に出ない。しかしモスクワでは、目の前で木が倒れ、ひょうが降る中を平気で市民が歩いていた。

 地震さえ経験したことのないモスクワ市民が、一度大災害に襲われれば大丈夫なのだろうかと心配になるが、蚊も綿毛も気にならないロシア人はそれだけでもすごいと思う。

(N)