庶民喜ぶ「食肉不正」?


地球だより

 今や世界最大の食肉輸出国となったブラジルは、牛肉等の生産量においても米国に次ぐ世界第2位、世界の食肉市場に不可欠な存在となっている。ブラジルの牛肉は、加工品以外は日本に輸入されておらず、日本人には馴染(なじ)みが薄いが、ブラジル産の鶏肉は日本市場にも広く出回っており、一度は食べてみたことがあるはずだ。

 そのブラジルで、食肉の安全性を根本から揺るがす食品不正事件が発生した。事件は、ブラジル連邦警察が2年の歳月をかけて入念に捜査を進めていたもの。不正内容は、加工業者が期限切れなど基準に満たない食肉の販売を可能にするため、検査官に賄賂を渡していたり、違法薬品を利用して着色していたというものだ。中には、段ボールを使って嵩(かさ)を増していた鶏肉の存在も伝えられており、一時期、中国で問題となった「段ボール餃子」や「下水油」にも匹敵するほどの事件だ。

 ブラジル政府は、輸出対象国に向けて、不正を働いていた業者はあくまでも一部にすぎないこと、問題となった加工工場には輸出停止処分を下したことなどを伝えて、事態の沈静化に躍起となっているが、いったん失ったブラジル産食肉への信頼を取り戻すには時間がかかるだろう。

 一方、ブラジル国内でも食肉不正問題は、メディア等で連日大きく取り上げられている。ただし、街中のシュラスコ(炭火による肉の串焼き)店は依然として賑(にぎ)わいを見せているだけでなく、輸出が滞ったことで牛肉の価格などが13%近く値下がりをしている。最近のインフレなどで高根の花となっていた牛肉が安く買えるとあり、市民は突然のプレゼントに嬉(うれ)しさを隠せない様子だ。

(S)