パリに戻り始めた観光客


地球だより

 度重なるテロで世界一の観光都市パリの外国人観光客は減少を続けていた。

 しかし、最近のニュースによれば、パリのホテルの稼働率は例年並みかそれ以上に回復していると伝えられる。特にフランス人観光客が、真っ先にパリに戻ってきたようだ。

 地方に住むフランス人にとっても、パリは特別な町。地下鉄に乗れば、外国語が飛び交うパリだが、実際にはフランス人観光客が多い。とはいえ、2月に入り、ルーブル美術館で警備に当たっていた兵士が切りつけられるテロが起きたばかりで不安がないわけではない。

 事件現場は美術館地下部分にあるショッピングセンターからチュイルリー公園に出る階段付近。あまり目立たない出入り口だが、公園に抜けるには便利。世界最大級のルーブル美術館は、テロリストにとっては世界的インパクトを与えられる標的だ。

 実はパリには、テロの標的となるような建造物が多い。そこで最も標的となる可能性のあるエッフェル塔の足元に高さ2・5㍍のガラスの防弾壁を築く計画がパリ市によって進められている。

 この計画には「エッフェル塔の景観が損なわれる」などの批判の声もあるが、年間700万人も訪れる世界的観光地を危険にさらすわけにはいかないという考えだ。今後、凱旋(がいせん)門やノートルダム寺院、美術館なども防弾壁で囲むことになるかもしれない。

 気の遠くなるような金額の芸術作品が所蔵されている世界的美術館が立ち並ぶパリでは、これまでは作品の盗難に神経を尖(とが)らせていたわけだが、今では作品だけではなく、人命を危険にさらすテロの心配もしなければならない。

 日本人や中国人観光客がテロで激減する中、フランス人や他のヨーロッパ諸国、アメリカからの観光客は戻ってきている。フランス人の多くは「テロを怖がったら、負け」と言っている。

(A)