海外労働者の悲劇


地球だより

 出稼ぎ大国として知られるフィリピン。海外で働く家族の仕送りで、豊かな生活を送っている家庭も少なくないが、家族と長期間にわたって離れ離れとなることで、家庭崩壊などの問題が起きるケースも少なくない。

 最近、中東で働くシングルマザーの2歳の子供が、虐待を受けて死亡するという痛ましい事件があった。子供は親戚に預けられていたが、お漏らしを繰り返すことに激怒した親戚が暴力を振るい、全身アザだらけで病院に運ばれ死亡が確認された。

 この事件を受け海外労働福祉庁は、幼い子供を持つ母親の海外就労を制限する可能性を示唆した。すでに幾つかの州では、条例として禁止されており、これを全国に広げるというものだ。

 フィリピン人は大家族で暮らしていることが多く、祖父母や兄弟姉妹などに子供の面倒を頼みやすいという環境も後押ししてか、幼い子供を残して海外就労を目指す母親は珍しくない。海外就労を目指す動機としては、やはり子供を持ったことで家計の負担が増えたという理由が多いのも事実で、貴重な求職の機会を絶たれることには賛否もありそうだ。

 このような問題はドゥテルテ大統領も把握しており、短期間で契約を打ち切られる派遣労働を禁止し、全ての労働者を正社員として雇うよう企業に要請するなど、国内の就労環境の改善を目指している。そして最終目標は海外労働者がいなくなることだと言い切っている。

 フィリピンが出稼ぎ大国でなくなった時こそ、国民が本当に経済発展を実感できる時なのかもしれない。

(F)