政治家の口


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 米国の共和党大統領候補ドナルド・トランプは千変万化する口を持っている。関心誘導→攻撃→前言撤回のパターンに従っている。

 彼の刺激的な発言は確かに大統領選挙の歴史に一時代を画している。「メキシコの不法移民者たちは強盗でなければ性犯罪者だ」。瞬発力は政治10段が顔負けするほどだ。今月18日、「(過去の発言を)後悔している」と述べ、前言を翻した。続いて「不法移民者が追放を恐れることなく留まれるようにする方法を発表する」と語った。不法滞在者1100万人が胸をなでおろした。トランプは前言を覆したおかげでロサンゼルス・タイムズの世論調査で45%の支持を獲得し、43%にとどまった民主党のヒラリー・クリントン候補を逆転した。

 2014年のギャラップの世論調査をみると、米国人の28%は大統領と政府を「決して信じない」と答えた。「非常に信頼する」との回答は14%にすぎなかった。議会を「本当に信頼する」という回答は3%にすぎず、政治家に対する根深い不信が確認された。わが国もこの範疇(はんちゅう)を抜け出せないでいる。

 1992年、釜山のフグ料理専門店「草原ポックッ」に地元の各機関の責任者が集まって地域感情を煽ることを謀議した事件の余波もあって大統領選挙で敗北した後、英国に留学した金大中(DJ)は5カ月後に帰国し、「絶対に政治はしない」と宣言した。しかし後に政界に復帰し、97年大統領選挙に出馬して旋風を起こし、金泳三政権による通貨危機(IMF=国際通貨基金=危機)の混乱もあって当選した。国会議員の再補欠選挙で新人候補に敗北し康津での蟄居生活に入った孫鶴圭も復帰するという話が出ている。共に民主党の文在寅前代表は今年4月の総選挙で「(湖南地方=光州・全羅南北道=が)私に対する支持を取り下げるというなら未練なく政治の一線から退く」と語った。湖南地方で全敗したが、彼は大統領候補まで夢見ている。

 朴槿恵大統領は東南圏新空港の公約で嶺南(大邱・釜山・蔚山・慶尚南北道)地域の票を得たが、実現できなかった。青瓦台(大統領官邸)は金海空港の拡張が新空港だという詭弁を弄している。また、検事の外部機関派遣制限も約束した。政界の外圧を遮断するという名分によるものだった。しかし、青瓦台に勤務する検事たちは法務部・検察に復帰している。DJが「政治は生き物」だと言ったが、守れない約束を乱発する世界を彼の話法で弁明しているようだ。

(8月23日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。