シンガポールで新クリーン戦略


地球だより

 シンガポールでは今年から、公立学校で放課後、生徒に掃除をさせることが義務化された。全国の公立小中高校では、一斉に子供たち自ら、モップや箒(ほうき)を手に自分たちの教室や廊下、カフェテリアなどの共有スペースの清掃を始めている。これまで清掃は専門の清掃員が担当してきた同国では、画期的なことだ。

 教育省としては、日本をモデルに清掃を学校カリキュラムに取り入れることで、生徒たちによる自発的な清掃への心掛けを身に付けさせ、学校だけでなく家庭や社会でも清掃を習慣化させたいという狙いがある。富裕層だけでなく多くの中間層でもシンガポールでは、フィリピン女中を雇い自宅の掃除は専ら彼女らの仕事だった。

 なお、世界中から観光客が訪問するシンガポールは、国を挙げてきれいな街を作ろうという意気込みがある。歩道が汚れるのを嫌ってガムの持ち込みは禁止されているし、タバコやごみのポイ捨てには罰金、つばを吐いただけでも同様の制裁が科されるほど厳しい。

 変わったところでは、道路への打ち水にも罰金が科される。これは水たまりができると、ボウフラがわき蚊の繁殖を促すことになるからだ。それほどシンガポールでは、衛生状況や美観形成に気を配っている。

 シンガポールは日本を追い越して、既にアジア一の1人当たりGDP(国内総生産)を稼ぎ出している。

 チャンギ国際空港と海運を結んで世界の物流拠点にするという地政学的要衝を背景にしたメリットもさることながら、いいものは貪欲に取り入れて自らのものにしてしまう強力な受容力こそがシンガポールのパワーなのかもしれない。