空港で銃弾事件が再発


地球だより

 フィリピンの玄関口であるニノイ・アキノ国際空港で、世界的に悪名を轟(とどろ)かせた「銃弾事件」が再発し、利用者たちが再び戦々恐々としている。

 銃弾事件というのは、何者かが利用客のバッグなどに銃弾を忍ばせ、エックス線検査で発覚した後に恐喝して、お金を巻き上げるというものだ。アジア有数の銃社会だけに銃弾は珍しいものではなく、誤って荷物に紛れ込んだケースもないとは言えず、事件の原因究明を難しいものにしている。中には幸運のお守りとして銃弾を持ち歩いていた利用客もいた。

 しかし中には明らかに空港職員の関与が疑われるケースもある。最近では荷物から1発の銃弾が発見された70代の老夫婦が、空港警察によって拘束されたが、一緒だった家族によると、銃弾が発見された後に、老婦人の車椅子を押していた職員が5万ペソを要求してきたという。老夫婦は米国に向かう予定だったが、この事件でそれどころではなくなった。昨年には日本人も銃弾で足止めされており、ゴールデンウイークでフィリピンを訪れる観光客もひとごとではない。

 不思議なのはこれだけ世界的に注目される事件にもかかわらず、空港のトップに責任の追及の矛先が向かないことだ。もちろん国民やメディアからは批判は高まっているが、アキノ大統領は「被害者はほんの一部にすぎない」と楽観的だ。同じように毎週のように不具合で列車が停止する高架鉄道も、改善される兆しもなければ、責任者が辞任する様子もない。フィリピン人にとってこの種のトラブルは、不運によって起きてしまうことで、これを事前に防止するという意識は希薄なようだ。

(F)