飲酒守則の変更


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 朝鮮時代の文章家、孫舜孝は深酒で間違いを犯すことが多かった。ある日、成宗(第9代王)が密かに召して小さな銀杯を与え、「これからこの杯で1日に3杯だけ酒を飲むようにせよ」と命じた。しばらくして成宗が孫舜孝と出会うと顔が赤かった。王が詰問すると、彼は「いただいた銀杯で3杯飲んだだけです」と言い張った。王はその銀杯をすぐに持って来させたが、小さな銀杯が大きくなっていた。孫舜孝が「銀杯が小さいので鍛冶屋に少し大きくさせました」と吐露すると、王は豪放に笑い飛ばした。

 孫舜孝は幸い長寿だったが、有史以来、酒のため短命な人は数知れない。世宗(朝鮮第4代王)の時代に集賢殿には有名な酒豪が3人いた。彼ら、申檣、尹淮、南秀文は集まりさえすれば一晩中飲み明かした。世宗が彼らを召して「これから絶対に3杯以上は飲むな」と厳命した。3人はその後、3杯以上の酒は飲まなかったが、深酒で順次世を去った。タライのような大きな器で毎日3杯飲んだためだった。

 保健福祉部(省)が最近、国民の健康のため飲酒守則を変えたという。がん予防の守則のうち飲酒に関連した事項を「酒は1日に2杯以内だけ」から「1日1、2杯の少量の飲酒も避ける」に変更したのだ。今回の措置は1日に1、2杯の飲酒も肝臓がん、食道がん、乳がんなどの発病の危険性を高めるという海外の研究結果に基づいたものだ。国際がん研究所では飲酒を1群の発がん要因に規定している。欧州連合はがん予防のために我々より2年早く既存の守則「男2杯・女1杯以内」を「飲酒はしないこと」に修正した。

 深酒は精神の健康にとってもがんのような存在だ。醜いという漢字は酒と鬼でできている。実際に酒を酔いつぶれるまで飲むと、結局、ざんばら髪の幽霊のように醜い姿になってしまう。

 タルムードでも、世の初めに人間がぶどうの木を植えると悪魔が近づいてきて誘惑する話が出てくる。悪魔は羊と獅子と猿と豚の血を混ぜて作った肥料をぶどうの木に与える。それで人間はぶどうで醸造した酒を飲むと、最初は羊のように穏やかだが少し経つと獅子のようにどう猛になり、猿のように踊って最後には豚のように寝転がって醜くなるのだという。我々の過度の飲酒文化を見ると、間違いなくタルムードが語る通りだ。ちょうど今年は申(さる)年。酒を飲む猿が豚に急変することだけはなくさなければなるまい。

 (3月21日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。