救急バイク


地球だより

 1970年代、アジアの車両地図は香港がベンツ、台北がバイク、北京が自転車だった。現在、東南アジアの車両地図は、シンガポールでベンツ、ベトナムでバイクといったところかもしれないが、さすがに自転車都市はいまだ誕生していない。何より南国の人々は汗を流して自転車をこぐことを好まない。

 さてそのバイクのベトナムで、このほど同国初となる救急バイク隊をホーチミン市が発足させた。ホーチミン市の医療統計では、救急搬送される患者は全体の1%にも満たず、路上で死亡したり、適切な治療が行われないまま後遺症が残ったりしてしまうケースが後を絶たない。

 ホーチミン市には現在、約200台の救急車があるものの、主に転院搬送やイベント会場からの救急搬送に使用されているケースが多く、日本の消防署のように救急搬送を管理する機関がそもそも存在しない。これでは効率的な運用ができないのは当たり前だが、さらに人口800万都市のホーチミン市にバイクは600万台と、大人1人に1台といったバイク都市ならではの悩みとして、バイク渋滞に巻き込まれるケースが多い。ましてや車両型救急車となると「アリの大群の中の青虫」の状態に置かれることは必至だ。

 そこで医療機関が思い付いたのが救急バイクだ。これだと渋滞をすり抜けることは可能だし、狭い路地などにも入って行くことが可能だ。この救急バイクには、酸素ボンベ、吸引機、心電計などを搭載しており、GPS機能を活用することで、患者の位置を特定することも可能になった。

(T)